無論、背年松之にその回答が得られる筈もないが....
元来、愛とは融通無碍で、簡素なものだ。
恋愛、と言うカテゴリに無理矢理収斂し、ひとりしか愛せないと
するのは、実は恋愛ではなく制度、である。
純粋な愛が、普遍的な形態から得られるとは限らないからだ。
例えば、フレデリック・ショパンとジョルジュ・サンドは愛人関係である。
しかし、この二人を不純だ、などと言う者はいない。
また、クララ・シューマンとロベルト・シューマン、ブラームスもそうだ。
誰一人としてクララを責める者は居ない。
愛とはそういうものだ....。
真剣にひとりを愛す事ができれば、それで良い。
シンプルに。
不幸にして松之は、まだそう考えられるほど成熟してはいない。
松之自体が潔癖なまでに純粋な愛の持ち主だから、
自らを嫌悪したのだ...。
愛し合う幸せに酔っていたふたり、深町と夏名の
火照った頬をそよ風が優しく撫でる。
瞳を閉じていた夏名は、ゆっくりと睫を開く。
眩しくて、何も見えない。



