と、言うかわりに、ワン・コーラス伸ばして
ギターをバッキングに移し、夏名にリードを取れ、と
目で合図。
かぶりを振る夏名に、リードを取らせたくて
同じコード・シーケンスをもう一度繰り返す。
さあ、弾こうよ、カナちゃん!。と、深町は言葉を掛けた。
恥ずかしそうに、弾きだしたアド・リヴ。
感覚はオーソドックスなコード・トーン展開だった。
どっちかというと、日本のポップス系かな。
深町は、夏名のアドリブ、展開の仕方があまりに普通、
ピアノ教室で習うような変奏の付け方のようだったので、そう案じた。
でも、フレーズのあちこちに出てくる感覚は、その人の素のものだ。
...カナちゃんって、育ちがいいんだな、すごく。
ケレン味の無い、斜に構えている所がないフレージングは
そのまま、普段の夏名の印象だった。
感性の世界で生きている人間には、そういうところで
通じあえるか否か、が決まってしまうところもある。
メロディもそうだし、歌詞の作り方、歌い方で
人となりが分かってしまうから、面白いものだと
深町は考えていた。



