elevator_girl


書架の方へ指先を走らせ、図書館にある本の分類
それが国際標準のコードで決まっている事や、配架にもルールがある事などを
簡潔に説明した。

そのひとつひとつを丁寧に頷きながら聞く諒子に、松之は好感を覚える。
そして「文学、文芸は3階ですね。文学が良いでしょう?」と松之が
はやる気持ちを抑えつつ、上気した頬を気にしながら話すと

「あ、今日は、植物図鑑を見たいと思って。」と諒子はにこやかに言う。


松之は、ちょっとぎくり、とする。
根拠の無い妄想だが、植物図鑑、と言う
どちらかと言うと、女の子があまり好まないような書物の存在に
他の男性の影、を見て怯えてしまったのだ。


端から見ていると滑稽なものだが、恋とはそうしたものだ。
彼女の気持ちがどちらを向いているか、が気になって仕方ない。
情報が何も無いのだから、推測は出来ない。
だから、不安な気持ちがまた、不安を呼んでしまう....。


可笑しな行為だが、そんなものだ。誰にも経験があるように
この時の松之にも、そういう恋愛感覚が生じていた。




「?」

無論、傍観している諒子には、松之の不安など分かる訳も無いのだが...。



ただ、クエスチョン・マークが浮かぶだけ、だった。