斜めの光線、午後の傾きかけた陽ざしは
すこしオレンジ色っぽい光に見え、図書館の
やや黴っぽい雰囲気の中では、とてもオーガニックな雰囲気を
その光は醸し出す。
割と、簡素な服装が好みなような諒子、しかし
その光線の中だと、とても絵画的に見える...。
喩えて言うなら、ジャン=フランソワ・ミレィの「晩鐘」の描写、のような....。
と、そこまで連想して、その不吉な連想を掻き消そうとする松之だった。
「晩鐘」には、死と祈り、がイメージされているからだ。
なぜ、そんなものを.....?
それで、松之は何も言えなくなってしまう。
それを、辛うじて振り切ると....
松之のイメージ・フィールドに、広大な草原、風に揺れる一輪の可憐な花、
そんな映像が浮かぶ。
うすももいろの五葉の花弁が、やや寒い、乾燥した風にふるえている...
そんな感じだ。
「柳さん?」
松之は、その諒子の言葉で我に帰った。そして
バッド・タイミングだった事を追認した。
....。危ない危ない。深町が「感情に走るな」と言ってくれたばかりじゃないか。
相手の気持ちをまず考えて、迷惑になる事はするな。
松之は、深町のメッセージを反芻し、普段の顔色に戻る。



