「そうですか。無事通りましたか」


―――当然のことだ―――

いささか興味もないといった感じで返事をする俺に叔母さんは苦笑いを浮かべる。

「でも凄いわねー、隆文くんは。
まさかトップぶっちぎりで入所なんて!」

大袈裟な。

トップであろうとなかろうと実力こそが全て。俺より上なんてどのくらいおるものか。

たかが鍛練所。

そこのトップに君臨したところで
自惚れる方がどうかしてる。

「そんなことはないですよ。
買い被り過ぎもいいとこです」


俺は成瀬隆文。
訳あって両親は居らず、今まで叔母さんにお世話になっていた男。

なんで"今まで"と言うのか。

それもその筈。
俺が入所する鍛練所
それはこの世界とは異なる

"もう1つの世界"

聖騎士という戦士、魔道師という魔法使い

そんなものが存在する

夢のようでアニメのような世界

俺はその世界にある鍛練所に入所する。


"フリージア鍛練所"

あっちの世界では有名で強者な聖騎士や魔道師が集うとされる鍛練所。

自由自在に魔法陣や聖剣魔術を操り、一流を目指す為に設立されたという鍛練所である。

そんな有名でかつ優等な奴が集う鍛練所に俺はぶっちぎりのトップだったらしい。



多分、何人かから目の敵にされるだろうな。


分かりきっていることをなんとなく考える


俺の目的を
―――果たすためにも―――


「じゃあ隆文くん、寂しくなるだろうけど。いつでも帰ってきなさいね」
「叔母さん、ホントお世話になりました」

ホントここではお世話になった。
身の回りのこと、洗濯から食事、服まで、全てにおいて手助けしてくれた。
感謝すべき恩人

「なにを言ってるの!
隆文くんは私達の家族なんだから!」

家族……。

その言葉が嬉しいと同時に悲しくなる。

でも、叔母さんには悪気はない筈。
ここはありがたく気持ちを受け取ろう。

「はい。ありがとうございます」

こうして、俺は"フリージア鍛練所"に入所する準備をすることにした。