僕には見えないけれど

コトンとマグカップが置かれる。そこから、ゆっくり甘い匂いがゆっくりと漂う。
「ホットミルクだから、あったまるし落ち着くと思うから」
家で出されるホットミルクとよく似ていた。千秋さんは黙って私の頭をなでてくれた。

お母さんとの記憶が蘇る。今までこんなことはなかったのに、きっとよく似ているからなのだと思う。
辛いことがあると部屋でグズグズ泣いている私をお母さんは見つけては、甘いホットミルクを作ってくれた。

何を聞くわけでもなく、何も言わずに私の頭をなでてくれた。その手は暖かくて、私はすぐ寝てしまっていた。

ここは落ち着くけど、私の家じゃない。ここじゃない。
「ずっと、思ってたことがあるの……」
「なに?」
私を頭をなでていた手を止め、優しく微笑んでくれる。

「どうして、私に優しくするの」
「え?」 
千秋さんの動きが一瞬止まる。