お風呂に入って、私は晩御飯の支度をしていた。千秋さんだって晩御飯を食べていないから、お腹空いていると思うし少しでも恩返しをしたいから。家では、お母さんの帰りが遅い時になんとなくやっていたから簡単なものなら作れる。

冷蔵庫の中は甘いものだらけで、しばらく口が開きっぱなしになってしまったけど、なんとか材料があるカレーを作ることにした。時間は人の何倍も掛かるけど、 それなりに食べれるものは作れる。

グツグツと音を立てるカレーを見つめる。
「アキちゃんちっちゃくなってる」
「ひぃっ!?」
振り返るとふわふわとした女の人とすごく大きな男の人がいた。

千秋さんとうってかわって、ぷにぷにとした体型。私をじっと見てくる。
私は逃げるようにソファに隠れる。
「千秋はもっと気ぃ強いだろ」
「それもそっか!」
千秋さんの知り合いなのかな。

「怖がらせてごめんね?」
女の人が私にゆっくりと私から離れてソファに座る。手のひらに丸い綺麗なピンク色のお菓子をのせている。
「餌付けかよ」
男の人は呆れたように言う。

「食べる?」
見たこともない、高そうなお菓子。
「おいで?」
女の人はぽんぽんとソファを叩く。

私はゆっくりとその人の隣に座る。
私はじっとお菓子と女の人の顔見る。
「大丈夫だよ、どうぞ?」
袋を開けて、私の手のひらに出してくれた。

強く握ったら壊れてしまいそうなお菓子。口に入れると、サクサクしているのにふわふわとしていて初めて食べるものだった。
「おいしい?」
私は小さくうなずいた。

「誰のこどもかな?」
「低学年ぐらいか?」
全く噛み合っていない会話を聞き流す。
「ただいま、………」
千秋さんの顔がとても冷たかった。

「ココ、ただいま。寝ててよかったのに」
「えっ、あ、眠くないから……」
私は千秋さんに腕を引っ張られる。
二人は困ったように千秋さんを見ていた。

「……?
カレー?ココが作ったの?」
「お腹、空いてるかなって」
千秋さんは小さく笑って、私の頭を優しく撫でてくれた。

「ありがと。もうちょっとしたら、一緒に食べよ?」
千秋さんは笑って私の頭をなでてくれた。
「外。行くよ」
千秋さんは二人に向かって冷たく吐き捨てて、部屋を出て行った。