僕には見えないけれど

丁寧に洗ったあと、湯船に浸かる。
あたたかい。安心する。
「ぬるくない?」
「大丈夫です…」
私は、浴槽の中で足を伸ばす。

「あんたさ、よく外に出されてたの?」
ガリガリと何かを噛み砕く音。
「たまに、です」
「ふーん」
なんで、そんなこと聞くんだろう。

「叩かれたりとか、嫌なこと言われたりしてないの?」
「え、あ、はい...」
語尾が小さくなる。

ガラッとお風呂の扉が開く。
綺麗な整った顔。茶色に染められた長い髪。大きくて綺麗な目。全体的にカッコイイ印象だ。
グイッと腕を掴まれて、無理やり立たされる。

「ひゃっ」
「転んだにしては多すぎるし、どうやったらお腹にこんな青紫のあざができるわけ」
「で、でも、みんな、我慢してるから」
私は自分でもわかるくらい声が震えていた。

「それは違う」
女の人が、私の目をじっと見る。
真っ直ぐと私を見る目は強くて、羨ましいと思った。アクセサリーを何もつけていない。
綺麗な人だとアクセサリーをつけないのかな。

「ばっかじゃないの」
ペチンと頬を叩かれる。痛くなくて、私は呆然とその人を見てた。
「まぁ、そんなにひどくはないと思うし。
そのうち跡も消えてなくなるでしょ」
そう言うとその人は浴室から出て行った。

私はわけがわからず、湯船に浸かりぐちゃぐちゃしている頭の中を落ち着かせることに集中していた。