秋兄の車におとなしく乗っていると、秋兄がクスクスと笑い出した。
「なに?」
「いやー、陽太と似てきたなって」
「どういうこと?」
似てると言われても外見なんて僕はわかんないし、性格だって正反対だったと思うし、いまいちしっくりこない。

「恋してるのか?」
僕は黙ったまま俯いた。
「あの、寝てた子?」
「放っておいてよ」
僕は苛立ちを隠すことなく告げる。

車が止まる感覚がした。沈黙がしばらく続く。僕は、何も言うことなくただ黙って待っていた。
「あ、おばさんー?
陽斗、今日一日借りるねー」
電話をしていたらしい。しかも、その相手は僕の母さんだ。

「は!?家帰らせてよ!!」
「うんうんー。あー、わかったー」
僕の意思など無視して話を進めていく。
「秋兄っ!!」
僕は怒鳴るように大きな声を出す。

「うるせぇよ。黙ってろ」
秋兄の低くてドスのきいた声。珍しく本気で苛ついている時の声だ。
僕は諦めて静かに従うことにした。秋兄を怒らせて外に出されたら、帰る術がない。

「俺さー、ぶっちゃけ陽斗のこと嫌いなんだよね」
好きになってもらえる理由が見つからない。僕は小さく鼻で笑った。
「目とかが原因じゃねぇぞ?おばさんも嫌いだし」
初めて聞くことに僕は驚いた。

「理由は話さねぇ。最後ぐらいの約束は守りてぇし、千秋もそういう気持ちらしいし。仮に話すとしたら、千秋が話すのが正しいと思うし」
言ってることがわからない。

「お前さ、明日死んだらどうすんの」
その声は低くて怖いって思う反面、なぜ悲しそうなのかわからなかった。