僕はノートをとっていく。点字ライターでだけど。
そういえばテストが近いな。
「すみません、今回のテスト範囲って?」
「今日やるところまでです」
「ありがとうございます」
隣からは寝息が聞こえる。

「古寺さんはここで受けるつもりですかね」
ため息まじりに先生は言う。
「それは、僕から言っておくので大丈夫です」
小さく僕は答えた。

僕のテストは問題を読んでもらって、口で答えるというやり方だった。
雪絵さんがいたら、それは『カンニング』になりかねないということだ。

また、淡々と授業が進んでいく。

そういえば、雪絵さんとちゃんと話したことなかったな。基本的に、話すこと事態が僕にとっては珍しいからどう話していいのかもわからないけれど。

授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
「んー…?」
雪絵さんが起きたらしい。
先生はそそくさと教室を出ていく。

「昼」
あくび混じりに雪絵さんが言う。
「えっと、その、あの……」
僕はなんと切りだそうか悩みながら、雪絵さんに話しかける。

「ん?どしたの」
雪絵さんはちゃんと僕が話しだすのを待っていてくれる。
「あ、えっと、テスト近いね?」
「そうだね?」
雪絵さんは不思議そうに答える。

「まぁ、テストなんて受けないけどね」
ケラケラと笑い出す。
「え?そうなの?」
めんどくさいって思ってるのかな。

「そうだ!夏休みいっぱい遊ぼうね!」
「え?」
「ひーちゃんといると、すっごく安心できるんだ」
その言葉に心臓がドキドキする。

「そ、そうですか」
「ん?顔赤いよ?大丈夫?」
「あ、いや、暑いだけです」
僕はブンブンと首を横に振る。