僕には見えないけれど

授業中も、家に帰っても雪絵さんのことしか考えてない。
蓋をした恋心は、なくなるわけではなさそうだ。

自分自身を騙すには、好きという気持ちは大きくなりすぎた。
「どうなりたいんだろ、僕は」
「どゆことー?」
雪絵さんの声が突然する。

「うわっ!?」
僕は思わず立ちあがってしまった。
「そんなびっくりしなくても」
ケラケラと笑う雪絵さん。

「相談に乗りますよ?」
張本人に相談ってしていいのか。
でも、問題は解決するよな。
「なんか、好きな人がいて」
なんだか、すごく恥ずかしいぞ。

「誰に?」
「ぼ、僕に」
「え、あ。そう」
雪絵さんの微妙な声。

「なんか、うまく想像できないんですよ」
「んー?」
「好きって気持ちがあるだけで、なんか、終わっちゃうんです」
好きと伝えた先が見えない。

「ひーちゃんなら、大丈夫だよ!」
雪絵さんのケラケラと笑う声。
少しだけ、鼻声な気がする。

「ひーちゃんに、恋人ができてもさ?
話せる、よね?」
不安そうな声。
「もちろん」
僕は大げさに笑った。

そうだ。
好きと伝えてダメだと言われたら、もう話すことさえできなくなるのだろうか。

すごく不安になってきた。
「花火、楽しかった?」
雪絵さんが明るい声で尋ねてくる。
「雪絵さんのおかげで」
僕は笑う。

「んー、ならさ!敬語やめない?」
雪絵さんが僕の頬を両手で挟む。
「ふぁ」
「ね!いいでしょ?」
僕は首を縦に振る。

「やった!」
雪絵さんが嬉しそうにしているのを感じて、僕は思わず笑ってしまう。
「なんで笑うのさー」
「かわいいな、って」
「かわいくない!」
ぺしっと叩かれた。

照れ隠しなのかな?
「あ、なら、ひーちゃんってやめてくれない?」
「なんで?」
不機嫌そうな声にまた笑ってしまう。

「子どもみたいでやだ」
「んー、却下で」
「え?なんで?」
「ひーちゃんはひーちゃんなの!」
よくわからない理論だ。

「雪絵って呼べばいい?」
「ふぉ!?」
びっくりしたらしい。今まで聞いたことのない声だ。

「ふふっ、おもしろい」
僕は笑いながら、雪絵さんの反応を思い出していた。
「笑わないでよ」
不機嫌そうに雪絵さんは言う。