人の声。いろんな匂い。
僕は栗山先生の手をぎゅっと握った。
「ひーちゃん?」
怖い。はぐれてしまったら、僕はどうしたらいいんだ。

どんどんマイナスな考えが広がっていく。
「ひーちゃん、手つなご?」
雪絵さんの声に僕は我に返る。
「ね?」
僕の手を優しく繋いでくれる雪絵さん。

「んふふ。仲良しって感じでいいね!」
栗山先生が楽しそうに笑う。
「つらくなったら言って。無理しちゃダメだよ」
雪絵さんはお母さんみたいに言う。

「わたあめ食べたい!あれも!」
栗山先生が楽しそうに言う。
「行ってきなよ。ひーちゃんとここらへんでまってるから」
「うん!!」
栗山先生の手が離れる。

「えっと、ひーちゃんもわたあめ食べる?」
「え、あ、うん?」
僕はわからず、疑問系で答える。

「あ、えっと、飴玉をフワフワにしたやつ、かな?」
雪絵さんが必死に説明しようとしてくれる。雪絵さんは、いつもそうだ。誰かのことばかり考えてる。
「雪絵さんの少し、もらってもいいですか?」
「え?あ、うん!」
僕は小さく笑う。

「ほいっ!あーんして?」
雪絵さんは、サラッと言う。
「えっ、あ、はい」
僕は口を開ける。
甘くてフワフワしたものが口の中に入ってくる。

「あまい……」
「おいしい?」
僕は頷く。
「よかった!」
楽しそうに雪絵さんは言う。

「花火始まるよー」
ガサガサという音とともにやって来た。
「ちーちゃん、その顔腹立つ」
「青春だなーって?」
せいしゅん?

「よし、行こっか!」
少し、坂を上がったところに向かうらしい。楽しそうな二人の声に僕まで楽しくなってきた。

「よし!ベンチに座ろっか」
誘導されながら、僕はベンチに腰掛ける。

ひゅるるる、という音。
何かが爆ぜるようなドンッという音。
少し、地面も揺れる。

「赤い丸い花火。あ、青色に変わる」
雪絵さんは自分の見たものを僕にわかるように説明してくれる。

僕も頑張って想像してみる。
色や形を、教えてくれたように想像する。