午前の授業がやっと終わった。普段の数十倍も疲れる。なんとか喧嘩は再開せずに授業ができたのはよかった。
「授業だるい」
雪絵さんがため息まじりに呟いた。

扉が勢い良く開く。
「おひるごはーん!」
栗山先生の明るい声に、少し安心する。
「ひーちゃん、だいぶ疲れてるように見えるけど。大丈夫?」
「はは、すこし」
僕は起き上がることなく机に伏せたま話す。

「あれ、ご飯まだなの?」
雪絵さんが何事もなかったかのように栗山先生に話しかける。
まぁ、話したくないのならいいか。
「一緒に食べようって思って」
不機嫌そうに栗山先生は言う。

「あ、そうだ!来週祭りやるんだよ!
隣町だけど、電車で行かない?」
栗山先生は、楽しそうに話す。
「僕、人混みはあんまり」
「花火もやるんだよ!?」
僕は困ったように笑った。

「行こうよ。家まで迎えいくし」
雪絵さんがなんともないように言う。かっこいいなぁ。
「は、はい」
僕は小さく返事をした。

「バッチリ、浴衣着せちゃうからね」
「なんでよ」
「花火は浴衣でしょ!!」
浴衣ってたしか小学校の時に着たような気がする。布にくるまっているようで、落ち着かなかったのを覚えている。

昼食をしながら、二人は楽しそうにお祭りの話をしていた。花火をイメージした曲もあったな、なんて別のことを考えながら僕は黙って二人の話を聞いていた。

人混みは苦手だし、大きな音も苦手。僕にとっては、音だけが頼りだから不安でしかない。かと言って、楽しそうに話す二人に「遠慮しときます」なんて言えない。

まぁ、なるようになるか。

花火と言われても、僕にはいまいち想像できなかった。火の花やら、空に咲く花やら、どれも想像できなかった。触れれるものは、イメージしやすい。おおよその大きさや形が理解できるからだ。

花と言われているのだから、綺麗なのだろうと理解はできても想像はできなかった。
まんまるの形だったり、星形だったり、いろいろな形があるらしい。それらを点で描いたような火の花。それが、綺麗なのだろうか。

考えても考えても理解できなくて、僕は諦めた。でも、二人が楽しみにしているんだ。きっと、すごく綺麗なんだろう。