学校について、いつもどおりぼんやりと午前中の授業を受けてお昼の時間になった。
先生が簡単にご飯の場所を説明すると、部屋を出て行った。

黙々と食べる。
「やっぱり、嫌いだな...」
ポツリと呟いた声は、やけに大きく聞こえた。ここの部屋は、病室と一緒だ。ベットじゃなく、机と椅子があるだけだ。

異常だと、お前は違うと、言われ続けているような感覚。
「いるかな、雪絵さん」
気がつけば、ずっと雪絵さんのことを考えていた。理由は、わからないけれど人のことを思うなんてお兄ちゃん以来のことだった。

ガラッと扉を開く音に、飛び上がる。
「ふぉっ!?」
「あ、やっぱりいたー!」
むぎゅっと、抱きつかれる。

ふわりと優しい匂い。嗅いだことがある、懐かしい匂い。
「栗山、先生?」
「ふふ、びっくりした?」
首に当たる髪の毛がくすぐったい。

「ちーちゃん、ひーちゃん驚いてるから」
雪絵さんの声。
僕は声をした方をぱっと見る。
「こ、こんにちは?」
僕はにへっと笑う。

「ひーちゃん、かわいい」
むぎゅむぎゅと抱きしめられる。
「わっ、ちょ、くるし」
僕は、パタパタと暴れる。

いつも助けに来てくれる雪絵さんが来ないので、どう対処していいかわからない。
「た、たすけて、ください」
女の子に助けを求めるのも情けない話だが。

「あ、ごめん、ごめん」
クスクスと笑いながら雪絵さんは、僕から栗山先生を引き離してくれる。
僕は少しだけむくれる。

栗山先生はかわいい、と暴れている。
「ひーちゃん、小動物みたいでかわいくて」
クスクスと笑いながら雪絵さんは言った。

「かわいくないですし」
僕はそっぽを向いた。
「あ、ごめん」
そう言いながらも、まだクスクスと笑っている。
「なんのようですか?
先生なら、職員室ですよ?」
僕は給食を食べながら言う。

「あ、そうだ!
一緒に食べようと思って来たんだ」
栗山先生は、ぱちっと手を叩く。
「一緒に食べよう」
雪絵さんは楽しそうに言う。