そういえば、誰かとご飯を食べるのはいつ以来だろう。
雪絵さんと栗山先生の話し声を聞きながら、
僕はそんなことを考えていた。

「ちーちゃん、野菜食べて」
「やだ!」
「あんたは子供か」
思わず、小さく笑ってしまう。

「笑った……」
「え、あ、すみません……」
「あ、ちがくて、えっと、んー………」
雪絵さんは言葉を詰まらせてしまう。

「笑ってくれて嬉しいとか、素直に言えばいいのに」
栗山先生がケラケラと笑う。
「なっ、ちーちゃん!!」
そこまで暗い顔していただろうか。

僕は自分の顔をぺたぺたと触る。
「……コンビニ行ってくる!」
「逃げんなよー、雪絵」
「うっさい!!」
栗山先生が爆笑している。

バタンっと閉まる扉の音。
一人で行かせて大丈夫なのだろうか。

急に静かになり、僕はどうしていいのかわからずもくもくとご飯を食べていた。カタンと隣に座る音。そして、甘い香り。

僕は箸を止めて、音がする方向を見た。
「陽斗くんさ、消えたいとか思ったことある?」
今にも泣きそうな、栗山先生の声が放たれた。