僕には見えないけれど

僕は説明しながら、雪絵さんは誘導しながら楽しく昇降口に向かった。

「あ。ちーちゃん!!」
「あれ、雪絵できたんだ」
ケラケラと笑いながら、栗山先生は言う。
「ほい。先生がハグしてあげよう」
ふわりと甘い香りが漂った。
「んっ、や」
甘くて、苦しそうな声。

「……あの」
僕は小さく尋ねる。
「陽斗くんもまざる?」
ケラケラと笑いながら、栗山先生は言う。

「へ?」
僕はよくわからなくて首をかしげる。
「ちーちゃっ、やっ!!」
抵抗している雪絵さん。

「ほらほら、ぎゅーっ」
グイッと手を引かれる。
「うわっ!?」
僕は転びかける、というか確実に転びました。

「あ、やべっ」
栗山先生が慌てたように呟く。
「ちょっ!!?」
雪絵さんのビックリしたような声。

ズサッと嫌な音がする。
「……痛、くない?」
柔らかいっていうか、フワフワしたものが僕の下敷きになっている。

「だ、大丈夫?」
ふわりと甘い香りが近づいてくる。
「ごめんね、調子に乗っちゃった」
反省しているようだ。

「……大丈夫、です」
僕は起き上がり小さく答える。
「どっ、どいて……!!」
震えた声が下から聞こえる。

「……は、はい?」
僕の身体がふわりと持ち上がった。
「軽っ」
柔らかいものが背中に感じる。

「本当に千秋、嫌い」
雪絵さんの怒ったような声。
「ごめんって。
今度、ゲーム買ってあげるよ」
困ったような笑い声が聞こえる。

「………絶対?」
「うん」
僕は床に降ろされる。
ちょっと待て。僕は雪江さんの上に倒れたのか?
そして、栗山先生に抱きかかえられた...?

男として、これでいいのだろうか。
「わかった。帰ろう」
バタンと、車のドアが開く音。
「車、乗れる?」
「……多分」
僕はうなずいて車に乗る。