クロック・ポジション。
時計の針を目安に説明していくこと、………だったと思う。食事の時や位置説明の時などに、使ってもらえるとわかりやすくて助かる。

僕は手をあわせる。
「いただきます」
「どうぞ」
母さんが笑った気がした。

僕はスプーンを使って、
ポテトサラダを口に運ぶ。
「おいしい」
僕は母さんに笑いかける。

僕ができる親孝行なんて、きっと
これぐらいだから。
「本当?
まだあるから、たくさん食べてね?」
他愛もない会話は
僕たち親子の愛情表現の形なんだ。

「お風呂も、できてるからね」
「ありがと……」
もくもくと食べながら、談笑していた。

「ごちそうさま、でした」
僕は手をあわせて言う。
「明日、学校だから寝坊しないようにね」
母さんはそう言って、僕の頭をなでる。

「うん。いってらっしゃい」
僕は小さく笑う。
「いってきます」
母さんは食器やテーブルの上を片付けて
出かける支度を始める。

母さんは夜に仕事をしている。なんの仕事なのかはわからないが、だいたい19時ぐらいに家を出ていく。土日はお休みだ。

僕は鍵を閉める音を聞いてから、自室に戻る。もちろん、リビングの電気は消した。
学校は、嫌いだった。
僕だけが別室で授業を受ける。
送り迎えをしてくれるが、嫌だった。

「また、ハルちゃんに会えるかな……」
僕はそんなことを思いながら、眠りについた。