ご懐妊は突然に【番外編】

「ただいま」

匠さんが仏頂面で帰宅する。

燁子さんが駈け落ちしてからというものずっと機嫌が悪い。

その他にも、葛城商事が円高時にエネルギー事業開発で投資したシェールオイル開発が大損をこいて、株価が大幅に下落した。

匠さんが着任する前の事とはいえ、経営企画部に連日つめられてストレスもMAXだ。

勿論、直接匠さんはそんな事情を私に話すことはないけど、総さまと先日ラーメンを一緒に食べに行った時こっそり教えてもらった。

「おかえりなさい。お夕飯は?」

「食べて来たからいらない」

だったら連絡くれたらいいのに。

少々ムッとするものの、こうゆう時は放っておくのが一番。

下手に文句を言えば八つ当たりされるのが目に見えている。

そう、と言って用意しておいた夕飯を片付ける。

匠さんはさっさとお風呂に入ると、ロクに話もせずに寝室へ直行だ。

なんだか今日も話すタイミングを逃してしまった。

「ごめんね、ちゃんとするからもう少し待っててね」

下腹をさすりながら、私は小さくため息をついた。

しかし、運悪く匠さんは突然出張が入り、翌日から一週間アメリカへ行くこととなる。