ご懐妊は突然に【番外編】

その時、マイクを持った総さまが檀上へとやってきた。

『本日は葛城匠さん、小森遥さんのウェディングパーティーにお集まりいただきありがとうございました』

司会進行も自らかって出るとは。しかも手慣れている。

匠さんの中で、総さまの株は急上昇だろう。

『ここで本日参列出来なかった方々よりビデオメッセージが届いております』

店内に置かれた巨大モニターのスイッチが入る。

「なんだ…また何かの罠か?!まさか小坂まで俺を裏切るつもりか?!」

披露宴でブレイクハートした匠さんは表情を強張らせてあきらかに動揺している。

「グーテン・ターク!友人の中谷です」

陽気な挨拶をして一人の精悍な若者が写る。

短く切りそろえた髪に爽やかな笑顔…私の初恋の人、中谷佑介先輩だ。

「きゃあ!」私は目を輝かせて思わず嬌声を上げた。

『葛城、遥ちゃんご結婚おめでとう。ついにこの日が来てしまったか、と言う感じです』

佑介さんはおどけて肩を竦める。

歳を重ねて大人の男性になった佑介さんの魅力は倍増だ。

私は胸の前でギュッと手を組んでうっとりした視線を向ける。

『今は仕事でドイツのミュンヘンにいます…独り身で』

まだ結婚してないと聞いて不覚にも胸が高鳴ってしまった。自分は妊婦のくせに。

『遥ちゃん、葛城が意地悪なことをしたら双子ちゃんと一緒にいつでもドイツに遊びにきてくださいね~』

佑介さんのメッセージに会場から歓声が沸く。

『待ってまーす。Viel Glück(じゃーね)』

そこでメッセージがブツっと途切れた。

「なんなんだ!あいつは!寧ろ俺が出張でドイツに行ってやる!でもって直接抗議してやる!」

匠さんはプリプリ怒っている。

「まーまーまー常務、シャレなんですから、そんな怒らないでください」

総さまは軽ーい感じで匠さんを宥めた。