ご懐妊は突然に【番外編】

『匠さんは私立海星学院中等部を卒業後、アメリカのセントフィリップスアカデミーに進学されました』

次のお写真はハロウィンの時に撮影されたもののようだ。

ジャックスパロウ船長やドラキュラの仮装に紛れてチャイナドレスを着た見覚えのある東洋人の女の子が写っている。

あれ…燁子さん?…と、思いきや気持ち骨格がしっかりしている。

よく見ると女装した匠さんだった。しかも結構完成度が高い。

会場内が俄かにざわつき、笑いがおきた。

『留学先で多彩な異文化交流をご経験され、匠さんは国際的な感覚を磨かれたそうです』

活舌のよい語り口調でナレーションが読み上げられる。

「これはなんの罰だ?遥…」

絞り出したように呟く匠さんの瞳には絶望の色が浮かんでいた。


披露宴が終盤に差し掛かると、匠さんはグッタリとしており、顔にはハッキリと疲れの色が浮かんでいた。

ドミノキャンドルを点火して『TAKUMI&HARUKA FOREVER LOVE』の文字が浮き上がった時に、トドメを刺されたようだ。

いつもは自信たっぷりの微笑みも、なんだか今日は弱々しい。



最後に両家のご両親に花束を贈呈する。

感動のクライマックスシーンだ。

「はるかぁ!おめでとう!幸せになるんだよ!」

パパはフォトジェニックに号泣している。思わず私とママもつられて涙ぐんでしまった。

一方、葛城家は冷静だ。

「母さん、やってくれたね?」

匠さんはニッコリと笑顔のまま、嫌味をかまし花束を渡す。

「貴方を育てるのにどれっっほど苦労したか、皆さんにちょこっと知ってもらっただけよ?」

葛城母は微塵の動揺も見せることなく、微笑み返して花束を受け取った。

やっぱりあの四兄弟を育てた女性だけあって強かだ。

何かあれば、お義母さんにお仕置きしてもらおうと心に誓ったのだった。