ご懐妊は突然に【番外編】

『新郎葛城匠さんは東京都K市で葛城家待望の長男として誕生しました』

「ど、どうゆう事だ?!これは俺を貶めるための罠か?!」

匠さんは動揺のあまり、ナレーションに訳のわからない突っ込みをする。

『ご両親の愛情を受けてすくすく成長した匠さん。ヤンチャな少年時代を過ごしました』

そこで写真だったスライドが動画に切り替わる。

男の子が二人テーブルに並んで座り絵を書いている。

一人は猫のようなアーモンドアイの男の子、その隣の男の子は一回り小さく目がパッチリしている。

恐らく、前者が匠さん、後者は航生さんだろう。

『航生、将来の夢はなあに?』

ビデオを撮影しているお義母さんが尋ねる。

『ん、っとねぇ、自転車屋さん』

航生さんはハニカミながら答える 。

葛城家に生まれたからには総理大臣 、くらい言うかと思ったけど案外地味だ。

『匠は大きくなったら何になりたい?』

『俺はねぇ、カエル!』

幼い匠さんの無邪気な回答に会場では笑いが起きた。

そこでブツっとVTRが途切れナレーションが入る。

『残念ながらカエルになる夢は叶いませんでしたが、現在匠さんは葛城商事の常務執行役員としてご活躍されています』

私もとうとう耐え切れずに、吹き出してしまった。

「これは完全に悪意があるよな?」

匠さんは顔を引き攣らせて言う。

再びスクリーンには幼少期の匠さんの写真が映る。

しかし、全裸で走り回っている写真や、晴子姉さんにオモチャを奪われて号泣している写真など、まともに写っているのはほとんどなかった。