ご懐妊は突然に【番外編】

私達はエレベーターを降りると21階の入口で受付を済ませる。

社長付きのベテラン秘書本郷女史が通りかかったが、私と匠さんという意外な組み合わせに振り返って二度見していた。

「遥、悪いけど先行ってて。一応社長に挨拶してくるから」

匠さんは社長室へ立ち寄ってから来るため、私は1人で応接室へ向かう。

ノックをしてから「失礼します」とお断りしてドアを開いた。

広々とした応接室のど真ん中に桶川部長はちょこんと1人座っている。

なんだか母親とはぐれてしまった子どものように心細そうだ。

「おお、小森、どうした?お茶出しか?」

「いえ」

私も身の置き場がなくて、キョロキョロしながら、桶川部長の前に腰を下ろした。

「なんで、小森が座るんだ?」

桶川部長はキョトンとしている。

「実は、話があって本日桶川部長のお時間を頂くことになりました」

桶川部長は不思議そうに「はあ」と生返事する。

「実は私、現在妊娠3ヶ月でして」

「そ、そうか」いきなりのカミングアウトに桶川部長の声は上擦っている。

「しかし、小森はまだ独身だよな?それで、どうするんだ?」

桶川部長はやや表情を強張らせて尋ねる。

「結婚します」私がキッパリと答えると「それはおめでとう」と言って、桶川部長はホッと表情を緩めた。