ご懐妊は突然に【番外編】

桶川部長に話す前に、私はユミと香織を給湯室へ呼び出した。

「なんなの?話って」

ユミはドリップ式のコーヒーを淹れながら尋ねる。

「まさか、子どもでも出来た?」

香織は朝食用に買ってきたパンを齧っている。

「え!なんでわかったの?!」

私が驚いて聞き返すと、香織はパンを吹き出して、ユミのコーヒーはマグカップから溢れていた。

「ええええ?!」

そして、遅れて絶叫。

「意外と常務も迂闊ねえ」香織は目をパチクリさせて言う。

「いやいや、結婚前から跡取りが確約されてるなんて、遥もなかなかやるじゃなーい」

なるほど。そういうポジティブシンキングもあったのか。

ユミの意見にホホウ、と納得してしまう。

「でも会社は、やっぱり辞めちゃうよね」香織が遠慮がちに尋ねる。

「そうだね」

「遥がいなくなって寂しくなるなあ」香織は小さくため息を着く。

「本当よねえ、私も早く嫁に行きたいわ」

ユミはマグカップに注いだコーヒーを冷ますようにフウと息を吹きかけた。

しばし、私達三人娘は感傷的な気分に浸る。

「そういえば」と言ってユミはハッと目を見開いた。

「結婚式はどうするのよ」

「まだ全然決めてないよ。でも多分、やるんじゃないかな」

お義母さんが結婚式はなし、なんて絶対に許さないだろうし。

私は苦笑いを浮かべる。

「そしたら常務のお友達もたくさん来るのよね」ユミは目をキラキラ輝かせる。

「多分…」

「東栄大の優良物件がわんさか来るわよ!香織!」

アメリカンコメディーばりに2人はハイタッチする。