ご懐妊は突然に【番外編】

和やかに談笑していたら、いつの間にやら出勤時間となっていた。

時間がギリギリだったので私と匠さんは、お義父さんの車に乗せて行ってもらうことにした。

本日は三人のため、リムジンに乗って行く。

「大袈裟だ」と言って匠さんは嫌そうにしていたけど。

私と匠さんが並んで座り、お義父さんは向かいに座った。

「それで、遥さんは仕事を続けるのかい?」車中でお義父さんに尋ねられる。

「いえ、退職しようと思ってます」

そうか、と呟き、お義父さんは少し残念そうだ。

「結婚したらさすがに匠さんとの関係も隠しきれないと思います。周囲も私の扱いに困るでしょう」

それに、と言って私は言葉を繋ぐ。

「葛城商事の跡取りを育てるという大事な仕事がありますから」

私の台詞にお義父さんは何度も深く頷く。

「確かに我が社の長期重要施策だな」

「しかも難易度AAAですね、社長」

匠さんが最もらしくいうので思わず笑ってしまった。


8:45

リムジンは葛城商事本社ビルへと到着する。

何とか遅刻せずに済んだみたい。

地下駐車場から各自のフロアまでエレベーターで上がっていく。

「桶川部長に話す時に声かけろよ」

別れ際に匠さんはコソリと耳打ちすると、澄ました余所行きの顔で自分のデスクへと去っていった。