ご懐妊は突然に【番外編】

酔っ払っていたので匠さんはよろけて壁にドシンとぶつかる。

「いったいなー。なにすんだよ、旦那さまに」匠さんはヘラヘラ笑っている。

「移香をぷんぷんさせて偉そうなこと言ってるんじゃないわよ!」

酔っ払っているのをいい事に匠さんに蹴りを入れてやった。

完全なDVだ。

やはり妊娠中はキレやすくなるようだ。ホルモンバランスの影響だろうか。

「いってー」まだヘラヘラ笑っている匠さんを一瞥し、肩をいからせて寝室へと戻って行く。

ベッドに横たわり頭から布団をかぶった。

「はるかぁ、おこってんのかー」

酔っ払った匠さんは私の後を追いかけてきた。

苦々しく舌打ちをする。

あんな薄情な男はもう知らない。

私はお腹の子どもたちと慎ましくひっそりと暮らすのだ。

…ちょっとはお義父さんに援助してもらいながら。

「はるかぁ」

しかし、匠さんは酔っ払って布団のなかに潜り込んできた。

本当にうざい。酒とたばこと香水が混じり合った臭いに吐き気がする。

「もう、ほんと来ないで!気分が悪くなるから」

私は両腕を突っ張って匠さんの身体を押しのけた。

「おい、いい加減にしろよ」

匠さんの目つきが一瞬にして鋭くなる。

ああ…キレたなぁ、と長い付き合いで解った。

一気に形勢逆転だ。