それから、父の消息がわかり、
兄は父へ社会復帰の道を与えた。
しかし、父はまたしても、
消息を経ってしまった。
兄は、住む家や職場まで父に与えたのに。
この時、兄は始めて私に言った。
身内に裏切られるほど、辛いものはないな…と。
これを境に、兄は父と縁を切った。
兄の心の傷は相当深いものだった。
大好きな父への想いは、
いつのまにか深い傷となって、兄を変えてしまった。
それから、何年かしてだろうか。
私の元に福祉事務所から手紙が来た。
父の住み処とこれから先の金銭的な援助はできるか?
との連絡だった。
父は病気を患っていた。
この時、始めて、私の娘に
会わせた。
娘はもう小学四年生になっていた。
このことを兄に告げると、
兄は、
父への心の支えになってやってくれ。とだけ私に告げた。
到底、それぞれ家庭を持っていて、父への金銭的な援助は、
兄弟みんな不可能だった。
私も散々兄を裏切った父を許せなかった。
でも、何度も裏切られた兄のたったこの一言で、私は、これから先、父の支えになろうと決心した。
兄がそう言ったから。
願うように言った、
兄の言葉があったから、
今もこうして、父と関わりを
持つことが出来ているんだ。
そう思うと、涙が溢れてくる。

