人のことばかり心配して

自分のことは何一つ喋ろうとは

しなかった人


プライド高くて、強がりだった人。


でも、家族の中で一番

心が繊細だった。



寂しいと、

辛いと

何故、私は早くに気づかなかったんだろう。


もっと早く気づいて
あげていれば、
兄を救えたかもしれない。


いつも、守られてばかりの人間は、人の気持ちなんか、これっぽちもわかっていないんだ。


冷たい兄の頬を撫でながら

私は深い後悔の念に襲われた。


みんなバラバラになって、それぞれ家庭を持って、他県で生活してるから?

昔、みたいに一緒に暮らしてないから、こんなにも残酷になったの?


ただ、思い出すのは

幼い頃、兄と一緒にいつも遊んでいた自分。

三人兄弟の末っ子の私は、
一番年が近い兄といつも行動を共にした。

長男の兄とは年が離れすぎていたから、いつも次男の兄と遊んでいた。

一番下のわがままな妹の私の
面倒ばかり見ていてくれていた。


私が年頃になって、
引きこもりになった時、

兄は無理矢理、私を部屋から連れ出して、峠の走り屋達と交流を持たせてくれた。

心を閉ざした私を救いだそうと
兄は兄なりの優しさを与えてくれた。

兄が改造したスポーツカーの
助手席は、私の特等席だった。