翌日、ゲームにログインすると、私たちの話を聞いたイリーナが絶叫した。

『ずるいよ!! 俺を置いてみんなで遊びに行くなんて!!』
イリーナは、ゲーム画面の中の薄紫色の可愛い服を着た女の子に地団駄を踏ませた。

すでに女性のキャラクターを演じることを諦めたようだ。
言葉使いが素のイリーナに戻っている。

私はというと、あの筋肉男子の姿で『私』とか言うわけにもいかず、ここまできたら貫き通す覚悟だ。


『仕方ないだろ、学生に金使わす訳にもいかないし。
お前、服1着に諭吉出す勇気、あるか?』

HARUの言葉にイリーナはしょんぼりと下を向く。
『無理だ。せいぜい3900円』

『だろ? 景斗、あの全身フルコーディネートでいくらだった?』
『4万円です』
『金持ちめぇぇえぇえぇ!!』
イリーナが泣きのモーションを入れた。

打ちひしがれているイリーナに、HARUが仕方なく口を開く。
『あー……来週の金曜、2人がうちに遊びにくるんだが、お前もくるか?』

HARUがそう言うと、イリーナは泣きのポーズをぴたっと止めた。
『何それ! 面白そう! いくいく!』


景斗いわく、自分が仕事でドタキャンをして、私とHARUを2人きりにする、という算段だったらしいのだが。
イリーナまで来るなら計画も何もない。

仕方がない、と私は残念な気持ちを飲み込んだ。

HARUと会える口実があるだけで十分な進歩ではないか。
ひとまずそれで満足しよう。