しばらく経って、HARUが席に戻ってきた。

「ごめん遅くなって。
あ、焼き鳥きたの?」

場が一気に華やいだ。
彼がいるだけで、空気は彼の色へと染まる。
彼の存在感は、場を明るくポジティブなものに支配する。

こんなHARUさんと付き合う女性は幸せだろう、と景斗は思った。

彼を選んだユウの選択は正しい。間違いなく幸せにしてもらえる。
それならば、自分に出来ることはただひとつ。彼女に協力しなくては。

何か彼女をサポートすることはできないか。
策を練った景斗は切り出した。
「そういえば、HARUさんの家に連れてってもらったときに、部屋に写真がたくさん飾られてあったよね?」

HARUは焼き鳥を頬張りながら答える。
「ああ、写真撮るのが趣味だからな」

景斗はユウを話題に巻き込みながら言う。
「すごく綺麗な写真だったから、今度ユウさんも見せてもらいなよ」

ユウは興味津々と言った様子で身を乗り出した。
「見たい!」

HARUは景斗の狙い通りの言葉を口にした。
「じゃあ、今度、うちに来る?」
ユウの顔色がパッと明るくなる。
「いいの!?」
「もちろん」

ユウは目を輝かせながら景斗の方を見る。
景斗、ありがとう!
そんな表情をしていた。

よかった。
ユウさんのお役に立てて。

これでいいんだ、と景斗は自分へ言い聞かせた。

嫉妬心がないと言ったら嘘になる。
いくら彼女のためとはいえ、彼女が別の男性との関係を深めていく姿を見るのは、気持ちのいいものではない。
景斗はズキズキと痛む胸を押し殺しながら、にっこりとユウに微笑んだ。