また怒り出してしまったユウに、景斗は柔らかく弁解する。

「そんなことないよ?
昔、彼女がいたことはあったけど……
話を聞く限り、ユウさんの方が経験豊富なのでは?」

するとユウは暗くうつむいた。
「私はいつも騙されてばかりで、ろくな経験がないから。
二股かけられたり、浮気されたり、そんなのばっかり。
仕方ないよね、私、大して可愛くもないし」

彼女の口から自分を貶めるような台詞を初めて聞く。
いつも自信のあるような素振りをしていたから、こんなことを考える人だなんて知らなかった。
あれは無理をして作り上げていた『キャラクター』だったのだろうか。
現実の『ユウ』という人物が、ゲームの中の『ユウ』よりもずっと自分に近いような気がした。

「そんなことないよ。ユウさんは可愛いよ。
ユウさんがいるのに浮気するなんて、信じられない」

慌てて否定してやった景斗に、ユウは思わず吹き出す。
「ありがとう」

それでも不安感は拭い切れなかったらしい。
揺れる瞳で再び問いかけてきた。

「ねぇ、景斗。HARUさんは、そんな人じゃないよね?」

景斗は大きく頷く。
「大丈夫。HARUさんは、優しくて良い人だよ」

心配する必要なんてない。

あの人はいつだって優しくて、頼もしくて。
今回だって、こうやって僕とユウさんの間を取り持ってくれたから、仲直りできたわけで。

こんなに頼もしくて信頼できる人、他にはいないと自信を持って言える。