「私、水原さんが普段どんなことを考えて、どんな悩みを抱えているのか、知りたいんです。
だって、私たち、お互いのことを知らなさ過ぎるでしょう?
まだちゃんと付き合っていない今だからこそ、何でも気軽に話せるチャンスだと思うんです」

ね? と彼女は景斗に同意を求め、代わりに元気な笑顔を見せた。

「どんなことでも構いません。
私以外の女性のことでも……何を言われても傷つかないし、気にしないって約束しますから。
私のこと、友達だと思って相談してください」

その言い方じゃあまるで全部バレているみたいじゃないかと、余計に申し訳ない気持ちが押し寄せる。
仕方なく、どこまで話せるかを頭の中で組み立てた。

「例えば、三浦さんだったら――」
一呼吸置いて、彼女の顔色をうかがいながら、慎重に言葉を進める。

「もしも友人が不倫をしていたら、止めますか?」
「不倫!?」

突拍子の無い質問に、彼女は驚いたように目を見開いてその言葉を繰り返した。

「友人が、ですか?」
眉を寄せて怪訝な表情で重ねて問いかける彼女に、景斗はこくりと頷く。

「そう、ですね……」

彼女は顎に手を添えて、うーんと小さく唸って悩み、やがてパッと顔を上げた。

「止めません」
「え? あ、そう……」

彼女の回答に、やや拍子抜けした景斗は間抜けな声で相槌を打った。