むくれながら答える私に、HARUは穏やかな笑みを浮かべた。
「夕莉。俺は、今まで通り一緒にいたいだけなんだけど。それじゃあだめかな?」

頬に手を添えられて、ぴくんと身体が反応する。

何が今まで通りだ。全然今まで通りじゃないよ。
HARUが結婚していると分かった以上、今までのようにただ単純に好きだなんて言えないよ。

そんな揺れる私にHARUの優しくて鋭い瞳が追い討ちをかける。
「俺、東京で一人ぼっちなんだぜ? 夕莉が傍にいてくれないと、寂しすぎて死んじゃうよ」

珍しく弱気な言葉を吐くHARUを、ついつい甘やかしてしまいそうになる。
「だって、いつかは帰っちゃうんでしょ?」
「なら、それまでは一緒にいようよ。それとも……」

HARUが私の身体に腕を回す。少し固い胸元に埋まる私の頬。
「もう俺なんかと一緒にいたくない?」


はい。と、言えればよかったのだけど。
とても言えない自分が愚か過ぎて泣けてきた。

こんなんじゃあいつまで経っても幸せになんかなれない。

彼を抱き返さないのは、せめてもの抵抗。
自分からは絶対に抱きしめてなんかやんないぞと、小さくてくだらない決意を胸に刻んだ。