両肩を掴んで強引にユウの身体をこちらに向けると、彼女はびくりと身をすくませた。
その様子がどこか脅えているようだったから、なんだか悪いことをしてしまったような気になって、それでもこの手を離す訳にはいかなかった。

ひとつ息を飲み込んで、ユウの困惑する瞳を見る。
「……もう、会わない方がいいと思う」

ユウは首を横に振った。
「簡単に言わないで」

「確かに、簡単ではないだろうけど……」
「景斗は何にもわかってないよ」
「辛いだろうけれど、それでもHARUさんは……」
「そういう問題じゃないんだって」

ユウは声を荒げて目を伏せた。
「……HARUのところに行かなくちゃ。景斗の傍には居たら……いけないの」
「……どういう意味?」
ユウは唇を堅く引き結んだまま、何も答えない。

どうしてそんな言い方をするのだろう、と引っ掛かりを感じた。
HARUの元へ行かなければならない? 自分の傍に居てはならない?
行きたい、居たくない、ではなくて?

「ユウさん!?」

「もういいの、放っておいて」

ユウは力いっぱい景斗の腕を振り払った。
今日何度目の拒絶だろう。
そのまま玄関を飛び出して行った彼女を、もう追いかけることなんてできなかった。