2・5次元の彼女

同期入社の岡崎は、気兼ねなく話せる同僚のひとりだ。
元々コミュニケーションが得意ではない景斗。仲が良いと言える社員は、片手で数えられる程しか居ない。

ニコニコと周りに合わせることはできても、上辺以上の深い関係を築くというのは難しかった。
なにしろ景斗は、自身の話題となると口を堅く閉ざしてしまうからだ。

……だって会社の人に、土日はゲーム三昧ですなんて、言えないだろう。
特に仕事場で長く付き合っていくことを考えると、下手なことを言わない方が得策だ。
オタクだなんて悪評が立っても困るし。

プライベートを明かさない景斗を周囲は、優しいけれど謎の人くらいに認識しているだろう。

そんな景斗の壁を打ち砕いたのが岡崎だった。
面倒見の良い彼は、ひょっとしたら、周りと打ち解けていない景斗のことを心配していたのかもしれない。
ひとりで行動したがる景斗を執拗に追い回し、ちょっかいをかけてきた。

岡崎の強引な性格もあって、今ではプライベートでも予定を組むような間柄になっている。


定年後の夫婦が経営しているような古びた定食屋に入って、二人はカウンターに座った。
この店の日替わり定食は、680円という安さの割にメンズも満足なボリュームで、近隣のサラリーマンから高評価を得ている。
カウンターとテーブル席3つしかない店内は、昼時になるといつも満席だった。
今日は時間が早かったせいか、なんとか待ち時間もなく席につくことができた。