=午後4時半、cloverのスタッフルーム=

可鈴が急いで制服に着替えて更衣室から出ると店長の声が響いた
「全員いるー?着替え終わった人からちょっとここ(スタッフルーム)に集まって!」

全員「はい!」 完全遅刻だと思って

いた可鈴は新人紹介があるため始業時間が遅れている事を知り、ほっと胸をなで下した。
そして少しすると全員がスタッフルームに集まった。店長は全員居る事を確認すると、話し始めた。
「今日も一日ご苦労様、今日からここに新人アルバイトの男性が入ります!入ってきて?」

と店長の手招きでその男性が男子更衣室からスタッフルームに入ってきた。

「はい!」

入ってきた男性を見た瞬間、私の思考が止まった。

「今日からウチで働いてくれる事になった、湊健吾さんです。」

そう、その人は・・・さっき道でぶつ

かったばかりの私の憧れの先輩だった。

先輩は少し緊張気味だけど笑顔で挨拶

をした。「湊健吾です、アルバイト初

心者なので何かとご迷惑を掛けるかも

知れませんが今日から宜しくお願い

します!」

なっなな、何で??

何で湊先輩がここに??

信じられなかった・・・私は全く整理がつかないままお辞儀をすると頭を上げた瞬間、湊先輩と目が合った。

「あれ?・・・たしか可鈴ちゃん?」

先輩が私の名前を呼んだ事で、全員の

注目を浴びる事になってしまった。

すると店長が「なんだ、安里さん知り合いなの?」なんて聞いてくるからもう逃げられない。「は、はい・・・」

何も悪い事してないのに、なぜか体が縮こまる。だって・・・先輩の知り合いなんて知れたら、ここの女性店員の皆さんに妬まれそうで怖い・・でももう遅い、それに先輩に嫌われたくないし・・・。

するといつもの爽やかな笑顔で先輩は

言った「同じ高校の先輩後輩なんです、でも知り合ったばかりで・・可鈴ちゃんもここで働いてたんだ。」そう聞かれると答えない訳にいかない

「はい・・・でも私も入ってまだ一ヶ月も経って無いんです。」

すると私と先輩が知り合いだと気付い
た店長がとんでもない提案をした。

「そっかー顔なじみがいた方が仕事も
しやすいかもね、だったら湊君の指導
は安里さんに頼もうかな? 湊君も、知り合いに教えてもらった方が質問とかもしやすいだろうし。」

(えっ?!・・わっ私が湊先輩の指導
係?!もの凄く嬉しい反面、職場の先
輩達の鋭い視線が痛くて怖かった。)

私は緊張しながら店長に言った。

「あの・・・私より、指導係に向いて
る方がいると思うんです私だって入ってまだ一ヶ月も経って無いですし・・ちゃんと教えられる自信もないので」

すると後ろから先輩方が話に割って入ってきた「そうですよ~安里さんはまだ高校一年生なんですから社会人の私が教えた方が良いですって!」

「私も指導係には自信があります!こ
このアルバイト歴が一番長いし、今ま
で新人を何人も教えてきました」

私は今日から先輩がこんな近くで見られると思うだけで十分だ・・指導係なんて贅沢極まりない!

すると悩んだ店長は結局、一番バイト歴が長い32歳の渡辺さんに決めた。

 良かった・・・私なんかが指導係なんてなったら頭がフリーズして逆に湊先輩に迷惑かけるだけだと思うし・・・先輩方の目の敵にもならずに済んだんだから、これで良かったんだ。