可鈴は頭が真っ白になった。

「ごっごめんなさい!!」

相手の顔を見ると・・・その人は、

可鈴が憧れている湊先輩だった。

可鈴は心の中で叫んだ。

(え~っ?!・・・みっ湊先輩!
うそっ何でこんな時に?しかも先輩の私物を壊しちゃたし!)

もう、最悪だ・・・

すると私が顔面蒼白で音楽プレイヤーを拾うと湊先輩は優しい声でこう言った「ごめん大丈夫?俺が前を見てなかったから・・・」

私は興奮しすぎて最初は声が出なかった。

「・・・あっ・・の・・ごめんなさい!!私が急いでて・・」

すると先輩は地面に落ちている私の鞄を拾って渡してくれた。
「怪我してない?」

優しく心配そうな顔をしながら私に聞いてくる・・・何で?

・・先輩は何も悪くないのに。

私の方が先輩の大事な

モノ壊したのに・・・。


「大丈夫です!!・・あの、私の事は
全然良いんです、それよりイヤホンを
壊してしまって本当にごめんなさい!」

すると先輩は爽やかな優しい笑顔で
こう言った「そんな、イヤホンなんて
新しいの買うから大丈夫だよ、それにイヤホン壊れたのは君のせいじゃないし・・・もとはと言えば俺が前を見て無かったのが悪いんだから気にしないで?」

あぁ・・なんていい人なんだろう・・・。

すると先輩はおもむろに私のスカートを見た・・・
(ヤバい!スカート、シワだらけなのに・・・こんな事なら、遅刻してでもアイロンかけてくれば良かった・・・)

すると先輩は笑顔でこう言った。

「その制服・・・桜沢高校だよね?」

「はっはい!」先輩にそう聞かれると

反射的に背筋が伸びた。

その様子を見ていた湊先輩は何故か吹き出してこう言った「プッ・・そんなにかしこまらなくても良いのに、もしかして1年生?」

「はっはい・・1年5組です!」

「そーなんだ、俺は3年1組 湊健吾」

(知ってます!入学式の日に一目ぼれしたあの日からまるで魔法の呪文みたいにその名前を何度も頭の中でくりかえしていたから・・・)なんて言えるはずもなく、私がなんて言おうか悩んでいると先輩の方から質問してきてくれた。

「そっか後輩かぁ・・名前は?」

「あっ安里可鈴って言います」

「へぇー・・・可愛いね」

(えっ?!かっ可愛い?! )

「名前・・・」

(あ・・・何だ、名前か・・・ビックリした・・・。)

先輩の言葉を聞いた途端興奮しきって

おかしくなってる頭が急に覚めた。

そっか・・・そうだよね・・。

すると先輩は少し困ったような顔を

して腕時計を見ると、可鈴に向かって

言った「あっヤバいもう行かなきゃ!

さっきは本当にごめんね?俺急がな

きゃだから、じゃあ!」

「あっ・・・」可鈴はお礼を言う

隙も謝る隙も逃して、ただ茫然と

湊先輩の颯爽と走る後姿を見つめ

ていた。

(やっぱり最高にカッコイイ・・・それに凄く優しかった・・ダメだ、
さらに湊先輩の事好きになっちゃうよ・・・)

 可鈴はふと我に返ると携帯見た。

「あぁーっ!ヤバい!」いつもなら、

すでに更衣室で着替え終わっている時

間だ!その後、可鈴はいつも以上の

急ぎ足でカフェに向かった。