雨恋~雨のちキミ~

「あ…。ど、どうする?」


「………分かったから、その写真消して!」


「さぁ…。先輩達次第ちゃいます?今後、彼女に手を出せへんっていうなら、考えてもいいですけど」


あたしからは先輩達の背中しか見えないけれど

声の震え方で、かなり動揺していることが窺えた


「行くで!」


「あ…、うん」


蜘蛛の子を散らすように走り去る後ろ姿を、ただ黙って見つめる


「大丈夫やったか?」


塩野くんの声に意識を引き戻された


「え………あ、う…」


大丈夫…だと思っていたのに

膝がガクガクと震え始めた

鞄を握り締める指も、氷のように冷たく感じる


「………ふー」


両肩を大きく上下させ、鼻から盛大に息を吐いた塩野くんが

あたしの手首を掴んだ

ビクッと体が揺れる


「とりあえず………人の居るところ、までな」


正直なところ

膝に力が入らず、一歩も動けそうになかったので

彼の優しさが心に沁みる


「………あり、がと…」


震える声でボソッと呟くと

『ん』と短い返事が、彼の肩越しに聞こえた


「何でここにあたしらが居るって…」


グラウンドを振り返っても、テスト期間前だからか

いつものように朝練をしている人達の姿はない