東堂くんは喋らない。






と、不意に東堂くんがこっちを振り向いたものだから、バチッと思い切り視線がぶつかった。




予想以上の近い距離に、思わずバッと顔を逸らす。



び、びっくりしたー…!




「……なんだよ、人のことジロジロ見て」




隣から聞こえる東堂くんの不機嫌そうな声。




「い、いや、あの、なんか今日、いつもと違うなぁって…」




私はやっぱり東堂くんの方を見れない。




「…は?なにが?」



「なにがって」




その時だった。




「松原ぁ~!」




突然隣にドスンと座ってきた山本に無理矢理肩を組まされる。




「ちょ、なに!?」



「何じゃねぇよ、楽しんでるか松原ぁ~!」



「そりゃ楽しんでるけど、あんた酔ってんの!?」




おかしいな、酒は買ってないはずなんだけど。




「酔ってねーよ!お、つーか化粧してる!?松原のくせに!」




そしてそんな失礼なことを言い、顔を覗き込んでくる山本。




「そりゃちょっとくらいメイクするっつーの!あーもう離れて!この酔っ払いジジイ!」




「だから酔ってねーって!」




「うざいー!」





ますます近づいてくる山本をグイと押し返そうとした時だった。




「…おい」




気付くと、いつの間にか立ち上がっていた東堂くん。



なぜか物凄く険しい顔で私たちのことを見ている。





「ん?どうしたの東堂くん?」



「…………」





東堂くんはスッと腕をのばすと。




山本の頭を指差した。





「頭に虫ついてるけど」




「えぇ!?」





虫と美女に弱い山本が勢いよく立ち上がり悲鳴をあげた。