東堂くんは喋らない。





山本に着いていくまま電車に乗り、移動する。



2駅ほど乗った小さな駅で降りて、山本に続いて南口から出た。



その間もやっぱり山本の様子はおかしくて、電柱にぶつかりそうになったり、ちょっとした段差で転びそうになったり。



こんな状態で一体どこに行くつもりだろうと不思議に思っていると、山本が一軒のケーキ屋さんの前で足を止めた。



あれ、ここって…




「ここ、柑奈のバイト先じゃん」



柑奈は去年の夏ぐらいから、ここのケーキ屋さんでバイトしているそうだ。

私も仲良くなってから、何回か行ったことがあった。




お店を外から覗いてみる限り、柑奈の姿はない。




「今日、柑奈休みみたいだけど。なんか用事?」



「休みじゃない。もうあがって、たぶんそろそろ出てくるはずだ」



「え、よく知ってるね」



「峰岸本人に聞いてリサーチ済みだ」




スマホを取り出し、時刻を確認した山本が、クルリと振り向いて言う。




「隠れろ!松原!」


「は…はぁ?急に何言って…」


「いいから、これから一世一代の俺の大勝負なんだよ!そこの電柱の陰にでも隠れとけ!」



そして山本が強く私の肩を押した。




「いいか?よーく見とけよ、俺の勇姿を!」


「え、ちょっと山…」




その時、



「お疲れ様でした~」



裏口のドアが開いて、私服姿の柑奈が出てきた。


髪はバイト中にそうしているように、お団子のままだ。




私は反射的に電柱の陰に身を潜める。




「おっお疲れ!峰岸!」



わざとらしく片手をあげ、そう出迎えた山本を、柑奈が不審そうに見た。




「山本。
メールでバイトのあがりの時間聞かれたから、もしかしてとは思ったけど…。なんか用事?」


「あ、あぁ。実は超絶大事な話があってだな」



いつになく緊張している様子が、山本の背中から伝わってくる。



や、山本。もしかしてあんた。