東堂くんは喋らない。






「おい!松原!」



その時、必要以上にデカい声で、山本に名前を呼ばれた。



「次、お前の番!」



「あ、うん」



もう一度横目でチラリと東堂くんを見て、席を立つ。



…やっぱり目が合うことは一度もないまま、私は教壇へ向かった。






そして。





「なんだよ、松原の隣かよ~!」


「それ、私のセリフなんだけど」




無事クラス全員クジを引き終わり、新しい席へとさっそく移動した。




新しく私の隣になったのは山本で、私の顔を見るやいなやショックを受けている。失礼な奴だ。



「ごめんね、だ~いすきな柑奈じゃなくて」



嫌味っぽくそう言ってやると、本当だよ、と大真面目な顔で頷かれた。




「俺、峰岸の隣になったらやりたいこといっぱいあったんだぞ?
2人で一冊の教科書見たりとか、峰岸が落とした消しゴムをだな、俺が拾おうとして2人の手が触れ合い…」


「はぁ?キモいんだけど。少女漫画の読みすぎじゃないの?」



「なっおまっ、人の夢をキモいとはなんだ、キモいとは!」



「だってキモいもん」



「恋愛っつーのは、キモいもんなんだよ!!」




ガタッと盛大な音を立てて立ち上がった山本の声が、教室中に響き渡る。




「……」



そしてクラス中の冷めた視線に全身を突き刺されながら、静かに席に着いた。