東堂くんは喋らない。





心の中でお母さんに文句を言いつつ、慌てて近くのカフェの軒先へ逃げ込む。




ドアには『本日定休日』の張り紙。




すぐに逃げ込んだからあんまり濡れないで済んだけど、これは…暫く家には帰れそうにない。





「災難だね、ハチ」



「ウー…」



ブルブルと身を振って水を払い落とすハチ。



ハチは濡れることが大嫌い。



お風呂もいつもメチャクチャ嫌がるしね。





雨が止むまでどうやって時間を潰そうか…なんてボンヤリ考えていた時だった。





「ワンワンッ」




と、どこか聞き覚えのある犬の鳴き声。





「ココア、もうすぐだから我慢しろ」




なんて、どこか聞き覚えのある声。




って…ココア!?




ということは、もしかして!








ハッとして顔をあげると、ちょうど私の隣に誰かが駆け込んできた。





そのミニチュアダックスフンドを大事そうに抱えた人物と、バッチリ目が合う。






「……とっ、東堂くん!?」




「………………」





東堂くんは一瞬大きく目を見開いた後、バツの悪そうに視線を逸らして、「…よ」と言った。