それよりも…

「話って、なに?」

「ああ…あのな、」

言い難そうに言葉を濁す

「…柚、お前には転校してもらう」


「…え?」

海兄の言葉が理解できなかった


「…転…校…するの…?」


「…ああ。しかも…かなりの不良校にだ」


重い沈黙が漂う


転校…は、まあいいとして

不良校ってなに


ヤンキーとか、暴走族…とかがいるのよね、不良校ってことは

一瞬、とある高校の名前が頭を過る

あそこ…ではないわよね…


その高校は

『凰乱高校』

この国の中で、№1に君臨する問題校

勿論、悪い意味で


彼らもまた、能力者だから問題で

普通の喧嘩ならまだしも、能力を使っ喧嘩が起こると厄介なの


しかもそこは全寮制

男女共学なのが唯一の救いかもしれない


行くと決まったわけではないけれど


でも、この近くに不良校なんてそこしかない

恐る恐る、聞いてみる


「その学校って…どこ…?」


「凰乱高校…だ…」


さっきの私はきっとフラグという物を建設してしまったのね

よりによって凰乱高校だなんて…


「拒否権は…」

「ない」


言い終わる前に言われてしまった

これはもう…開き直るしかなさそうね…

「…分かった。荷物とかは…」

「準備しといたら俺が送っとく、正式な転校は明日だ。今日は準備と下見だけしておけ」

「…分かった」

「…友達にも言っておけよ…会う機会は少なくなると思うから」

「…分かってる」


パタン、と後ろ手で扉を閉める

はあ、と一息つき、自分の部屋へ行く

まずは、荷物の整理ね…

タンスからどんどん服を出して、スーツケースの中に入れていく

と言っても、大して服はないからすぐに終わる

次は…と思ったところで着替えていなかったことに気づく

制服…はまだ届いていないから、いつもの服に着替えた


白のシャツに黒のパーカー

タイツの上に短パン

そしてヘッドフォン

服の色はその日の気分によって変わる

今日は黒と白

この色が一番多いわね

外に出るときは、マフラーを巻いて、フードを被って出る


顔をあまり見られたくないから

鏡を見れば白銀の髪が窓から入る風にユラユラと揺れていた

その髪と同じ、白銀の目

はっきり言って嫌いよ

この髪も、この目も


あの子達は、綺麗だと言ってくれたけど

もう会えなくなるのね


遅くならないうちに、挨拶に行こうかと思い、白のマフラーを手に部屋から出る

海兄はもう仕事に行っていた


玄関で、黒の厚底靴を履いて外に出た


眩しい光が私の視界を狭くする


今日もあそこに集まると行っていたから

もう皆いるはずね


行き慣れたあの場所に向かって、足を踏み出した