王子の結婚


眠りにつくまでは色んな話をした


「本当はね、ユナのことは噂で知ってたんじゃない
君の父上から定期的に知らせてもらってたんだ
徐々に母上との関係を修復させたことも、よく笑って泣いて、ちゃんと感情豊かに育ったことも
そして素直で優しい女性に育っていく様子を、まるでずっと見てきたかのように聞き及んでいたんだ」

それらが全てユナへの愛情を育んできた
会いたい気持ちを抑え、彼から聞く情報だけを支えにこの時を待っていた

今のユナを少しでも見たくて王宮での催事にヘルベルト家を招待しても、ユナは決して顔を出すことはなかった

会えない時間が更に想いを募らせた



そんなソウの話を聞き、ユナも自分のことを話した


「婚約が決まった頃、私はまだそれがどれほど大きなことか分かっていなくて
それよりも母上が私に笑顔を向けてくれて、父上が側にいる、それがとても嬉しいことでした
嫌われていたはずなのに、いつの間にか変わってきていて、それの方が重要でした」

婚約者、というのを意識し出したのは両親との関係がもう円満とも言えるようになった頃から

婚約が決まった当時には何も言わなかった父上が、次第に口にするようになった

『皇太子の妃に相応しくなること』

父上から諭されることが多くなった
構われていない時期があったからこそ、父上が直接言及してくることが嬉しかった

はじめは父上に認められたいと必死で教養を身に付けた

そして自然と耳に入ってくるようになった噂

若いながらも才知に長け、武力も他に勝る者がいないという
人を惹き付け、誰をも魅了するというその人が、自分の婚約者なのだと知り、興味を持つようになった

その興味も少しずつ形を変え、憧れのような気持ちを抱いた
会ってしまえば、それは更に形を変え、恋というものに変わってしまう気がした
その時はまだ先なのに、側にいられない人を恋しく思うのが怖かった
母上を追いかけた自分を思い出してしまいそうで…

だから婚姻を結ぶその時まで会わないと決めた




「だから王宮には顔を出してくれなかったんだね」

一度も来てくれなかった深層を理解した

何よりも今、隣にいてくれることが全て



お互いのこれまでを眠くなるまで語り合った

声が途切れ、気付けばユナが眠りに落ちている
自分の隣で安心しきった顔で眠るユナを見て、幸せを噛みしめた

そして、この幸せを守り抜くことを強く心に誓った