「誤解させるような状況で申し訳ありません
きっとカイ王子は私のことをからかってるんだと思います」
そうだ、それなら分かる
もし昔、少し会ったことがあるからといって
ご正妃もご側室もいて、しかも弟で皇太子の婚約者に言い寄るなんて、そうとしか考えられない
ソウはユナを上辺でしか愛さないと断言されたなんて、言えるはずがない
そんなこと、口にしたくもないし、ソウの反応がそれを肯定してしまいそうで怖い
だから、カイとの会話を説明なんてできない
でもソウの表情はもちろん納得していないようで
「兄上は女性をからかって楽しむような人ではないよ」
ユナをギュッと抱き締める
「ユナが兄上にときめいていたのも知ってるけど、君は僕の婚約者だからね
もし、兄上を好きになったとしても、兄上に渡すことはできないよ」
そんなことは分かっているし、好きだなんて思ってもいない
今、私が想いを寄せているのは目の前の貴方だから
でも何を考えているのか分からないカイ王子に戸惑っているのも確かで…
そんな気持ちを持っている自分がすごく嫌だ
「隙を作らないで、心配でたまらなくなってしまう
昨日も言ったよね、もうここには来ないようにして」
昨日、ここへ来ることをやんわりと禁じられた
カイ王子とここで会ったのは偶然で
ソウ王子がここに来たのも偶然…?
ユナの返事を待たず、手を引き出口に向かう
「今日の政務はもうないんだ
僕たちの結婚の儀まであと少しだね
それまでにもっと僕たちの仲を深めよう?」
歩きながら聞こえてきたその言葉は疑問形なのに、有無を言わさない強さを含んでいる
いつも二人で過ごすサロンを通り過ぎ、王宮からも出ていく
手を繋いだ状態で、あの後は無言のまま
ひたすら歩いていく様を道すがら従者たちが見送るが、その微妙な空気に誰一人として声をかけてくることはなかった
庭園も過ぎ、もう足も踏み入れたことのない場所だった
終始無言で怒っているのか
さすがに不安になってくる
少し勇気を出して口を開いた
「…あ、の…どこへ行くのですか…?」
おずおずと言葉を発したものの、返事は返ってこなかった
そのまま更に少し歩いて王宮とは別の建物が見えてくる
ソウは迷いなくその中へとユナを引っ張っていった
「お帰りなさいませ」
脇に立った衛兵らしき人がソウに頭を垂れる
「ご苦労様」
と、思いの外、機嫌の悪くない声が返された
久しぶりに発せられたソウの声に少しホッとする
そのままズンズンと進んでいき、一つの部屋へ通された
「ここは僕の宮だよ
今日からここが君の部屋
まだ後宮は使えないけど、特別にここに入る手配をするよ」
え…?
