王子の結婚


この次を読めば分かるの…?

何か言い知れぬ不安が胸を襲う

もやもやした気持ちを払拭したくて、書庫に足を運ぶ
ソウにもキーナにも告げず、一人向かった



先の三冊を元に戻し、次に手を掛けようとしたところで物音がした
音がした方へ少し歩を進めてみたが、

『ユナはまだ公式の身じゃないから控えた方がいい』

ソウの言葉を思い出して、ドキンと胸が鳴った

怪しい者と思われるのだろうかと、そわそわして立ち尽くしてしまった


「ここに誰か来るなんて珍しいね」

そう言いながら近付いてくる
この声は…

目の前に現れた人を見てホッとした
そしてドキッとした

「ユナ」

カイ王子…

最初の食事のあとに一度、お妃たちも含めた顔を合わせる機会があった
それ以来だった

「カイ王子、ご機嫌麗しく存じます」

頭を下げ、礼儀の挨拶をする

「そんな堅苦しくなくて大丈夫だよ
こんなところでどうしたの?王宮内の暮らしは退屈かな
女性向けの書物ならもっと奥にあるよ」

その書物の場所だろうか、少し後方に視線を向けてからユナに向き直る

視線が合ってバッと逸らしてしまった

ソウのことを、彼の全部丸ごと好きだと自信を持てる

でもカイを前にしてやはり落ち着かない
どうしても“この顔”に心がざわつく
だから、うまく見れない

「そんな風に顔を背けられると傷付くな…」

そう呟かれて慌てて顔を上げ、視線を合わせた

「す、すみませんっ!
カイ王子は綺麗すぎてとても見てられなくて…」

確かにそう思っている
でもそれ以上に、カイの見た目がソウに重なってしまうのだ、今もまだ

もう、全然違うと分かってるのに…


「あはは、ありがとう
ユナはソウとだいぶ仲良くしてるみたいだね
王家でもないのに政略結婚なんて可哀想だって思ったけど」

微笑んでくれるその表情にドキドキしてしまう

こんな気持ち、彼を裏切るみたいで嫌なのに、何故かカイを目の前にすると、自分の気持ちが思うようにいかない

「はい、ソウ王子はとても優しくてすぐに打ち解けられましたから」

ふと思い出した

「カイ王子も政略結婚されたのですか?」

昨日、あれを読んで思ったこと
隣国の姫と結婚することになったカイは、苦痛じゃなかったのだろうか

「ソウから聞いたのかな?
そうだよ、私も国益のための結婚をした
君たちと同じように」

「嫌ではなかったのですか?」

ソウは嫌だったと言った

「嫌だなんて思わなかったよ、それが王子たるもの
それに妃はよくしてくれてる、大変感謝してるよ」

彼とは違う
それが当然なことと理解し、受け入れていたんだ

カイが傷付かなかったことを知って、少し安心した



そう言えばカイ王子はこんなに口数の多い方だったかな…?

ふと、そんなことを思った