「とりあえず、話は明るくなってからだ。もう寝ろ」

「・・・鬼羅、側にいてくれる?」

「・・・ああ。ここにいるから」




鬼羅に体をそっと横たわらされ、その上に着物をかけられた千代は心細さに声を上げる。
何度も確かめなければ、不安になる。



声だけでは、心細い。



そっと手を伸ばすとすぐ近くに本当にいた鬼羅の着物に触れた。
それをグッと握りしめる。




「安心・・・できます・・・」




ずいぶん気を張り詰めてここまで来ていた千代はそうしてすぐに眠りに落ちて行った。
その様子を、鬼羅は複雑な心で見つめていた。




姫君として、おそらくなに不自由なく生きてきた千代。
その千代がその生活を捨て逃げてきたという。

千代のためを思えば、するべきではないことは確かであった。