逃げよう。 そう思うのに揺らぎはなかった。 今すぐにここから逃げてしまおう。 姫という位も、この生活もすべて捨ててしまおう。 知ってしまったから。 外の世界を。 護りたい場所ができたから。 このままでは、彼らの住処が彼らの命が脅かされてしまう。 自分がいなければ。 もしこの縁談が破談になって、時光の機嫌を損ねることができれば。 もしかしたら・・・。 そんな淡い期待を抱きながら。 千代はこそこそと身支度を整えた。