「時光さまの城はどこにあるのですか」



時光も若くして城の主なのだと聞いていた。




「ああ、あの森を挟んだ向こう側にあるよ」

「森・・・。では、あの森を渡ってこられたのですか?」




森、そう聞いて頭によぎる鬼羅の事。
どうしても聞かずにはいられなかった。
聞いたところでなにがわかるかわからないのに。



「そんなことをするわけがないだろう。あの森には悪しき鬼が生息しているというのに」



時光の声が低く苦々しいものに変わる。
千代が時光の表情を盗み見ると、それはそれは恐ろしく歪められた表情だった。




「影正殿の活動に共感してこの縁談を受け入れたという理由もあるのだ」

「活動・・・」

「影正殿は、精力的に鬼の討伐をしておられるとか。私もその考えには共感できる」




時光は、父影正と同じ思考の持ち主であった。
彼もまた、鬼を嫌悪し消し去ろうとしている。

そんな人のもとに嫁ぐなど・・・。



千代には考えられなかった。