「輿入れ・・・?」



父影正から突然言われた輿入れという事実。
今までそんな話が上がったことはなかった。

影正は、その輿入れにより鬼から千代を引き離そうと考えてのことだった。

そのために、これまで自分の懐で大事に育て上げた千代を輿入れする決心を固めたのだ。



鬼なんかに現を抜かすくらいなら。





「ああ。三浦時光殿のところに輿入れが決まった」

「時光さま・・・」

「輿入れは七日後だ。それまでに一度時光殿が自らお前に会いに来てくださるからそのつもりで」




突き付けられた現実を受け入れられないまま影正は行ってしまった。
輿入れ。


それは、どこなのだろう。
ここからどれほど遠く離れた場所なのだろう。




「鬼羅・・・」





鬼羅に、会えなくなるという事・・・?




千代の心は張り裂けそうに痛む。