「お前・・・いい匂いがする」




千代の肩口に顔をうずめ鬼羅がそう言う。
千代はくすぐったさに肩をすぼめ、クスクスと笑った。

幸せな時だった。


拒絶していた時の苦しさはなくなり。

素直になれば、こんなにも心が軽いのかと。



惹かれ合う二人。
それは必然か。




その時、外が騒がしくなった。




「探せー!」



「こっちはいないぞ!」





男たちの声が聞こえ始める。
いつだって静けさに包まれていた森。
その静寂が打ち消されている。





「鬼羅・・・?」

「人間の臭い・・・」

「え?」




ギュッと鬼羅の着物を掴む。
千代の肩を抱き安心させるように力を込めた。